春は好きですかと聞かれると、私は少し答えに迷う。 世の中では春は歓迎される季節だ。 桜が咲き、新しい生活が始まり、街の雰囲気もどこか明るくなる。 入学や就職など、新しい出会いや期待に満ちた出来事も多い。 けれど私にとって春は、どこか落ち着かない季節でもある。 春は別れの季節でもあるからかもしれない。 学生時代も、社会に出てからも、春になると人の移動があり、慣れ親しんだ人と離れることがあった。 大きな出来事ではなくても、そうした小さな変化の積み重ねが、何となく心をざわつかせるのだと思う。 それに春になると、気分も体も少しだけ輪郭がぼやけるような感じがする。 生暖かい空気も、私には少し苦手だ。 やわらかいと言えば聞こえはいいが、どこか輪郭のぼやけた空気のように感じてしまう。 その点、冬の空気は違う。外に出て冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、体の奥まできりっと引き締まるような気がする。 空も高く、景色の輪郭もはっきりしている。そんな瞬間に、ああ冬はいいなと思う。 季節の好みは人それぞれだろう。 そう思いながら、私は今年もまた、少し落ち着かない気持ちとともに春を迎えている。