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年に一度の蛍祭りの夜、大きなお腹をかかえて、幸恵は、けやき山へと向かった。
そこで、偶然、同級生の隆之と会う。
15年前、幸恵の両親は、幸恵に、2人揃って厳しくあたり、暴力を振るっていた。
耐えられなくなった幸恵は、蛍祭りの夜、両親に睡眠薬を飲ませ、家に火をつけ、
この山へと逃げてきた。
そして、隆之もまた、内縁の父に母と2人、いつも暴力をふるわれていたため、薬を
飲ませ、苦しむ姿を見て、この山へ来たという。
その後、どちらの出来事も事件性は無しと判断されたが、2人にとって、この夜のことは、一生忘れられない夜となる。
それから15年後、幸恵は、出産後、出血性ショックで亡くなる。
子どもは、「正道」と名付けられ、養父母に育てられていた。
しかし、小さな町では、幸恵が親を殺したのではないかとか、噂が絶えず、正道は、養父母ともうまくいかなくなってくる。
隆之の父にかわいがってもらっていた正道は、隆之の父が亡くなってから、町を出て、隆之と一緒に暮らすこととなる。
その後は、正道の同級生で派手な母親と2人暮らしをしている女の子の話や隆之の会社で事務員として働いている女性の話、そして、隆之が亡くなるまでのことが書かれている。
誰もが、いろいろなことを抱え、自分の気持ちに折り合いをつけながら、それでも、懸命に生きている姿が描かれていた。
ソプラニスタとは、男性でもソプラノの音域を持っている人。
ボーイソプラノやカンターテナーでソプラノの音域をもつ人をすべてイタリア語でソプラニスタ、英語でソプラニストと言う。
岡本知高は普通に出す声がソプラノで、カウンターテナーのように声を作っていない。
天然のソプラノ。そして、このソプラニスタは世界で3人しかいない。
著者神崎は中学の音楽教諭である。
ある日、高校3年である岡本からレッスンの依頼が入る。
岡本は中学、高校とブラスバンド部で、将来は音楽の先生になり、ブラスバンド部を指導したいと思っていた。
先生になるには、歌が歌えることはとても大切なことで、歌声を聴くことになる。
それが冗談かというくらい高い音。世紀の歌声のはずだったが、ソプラニストという声の種類があることを、当時神崎はまだ知らなかった。
岡本はサキソフォンを5年やっていて、これを受験の主専攻に決めていた。
しかし、神崎は類希な才能と豊かな感性を感じ、声楽科に志望変更を勧める。必ず成功するからと。
岡本の才能は目を見張るものがあり、指導も次の回では期待以上の成果を見せる。また、同時に歌うことが大好きだと彼全体から伝わってくるのだった。
こうして国立音楽大学声楽科に進み、数々の優勝、入賞を果たしていく。
大学に入ってから今日に至るまで、全国各地の学校訪問コンサートは彼のライフワークとなっている。
神崎はこの学校訪問において、ともに活動している。
子どもたちに本物の音楽を届けたい、神崎や保護者の思いは子どもたちの素直な感性へ届き、驚きと感動は、お礼の文章に見ることができる。
岡本の体格はそれは素晴らしく、食欲も体格同様である。そして、ほんとうに美味しそうに食べる。
余談だが、神崎によれば、岡本ほど魚の食べ方のうまい人はいないとか。猫もまたいで通ると表現している。
今日も朝からソプラノを響かせている岡本を勝手に思い浮かべるのだった。
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